あなたが猫を見つめる視線を思い出してください。
写真家・西川治の猫を見つめる
にこやかな視線が伝わってくるでしょう。
こちら
著書が60冊を越える写真家・西川治氏は、
料理研究家としても有名で、画家としても活躍しています。
この作品は、西川さんがイタリアに住んでいる時に飼っていた2匹の猫、
ズッケロとカピートのかわいい写真と、その物語を綴った、
味わいがあってしっとりくる雰囲気満点の写真集です。
ヨーロッパの佇まい、2匹のエピソード……。
やさしいまなざしが伝わってきます。
突然、「ミャーオ」と鳴いた。
いっせいに乗客は、オヤッという顔をし、あたりをキョロキョロ見まわしている。
足元にも、見える範囲内にも猫はいない。
はて。はて。変だなァとなめまわすように見ている。
「ミャーオー」
今度は声がするぼくらのほうに皆の顔が向いた。
しかし、子猫は見えない。ただ、白いケーキの箱があるだけだ。
いきなりケーキの蓋の間から一本の白い脚が出てきた。
目の前のおばあさんは目をまんまるくして、
ケーキの箱から出てうごいている脚を見ていた。
乗客はクスクスと笑っている。
「なんとおいしそうだこと」とおばあさんはいった。
-------------本文より抜粋
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