『ダジャレ ヌーヴォー』(扶桑社)の中にある「ダジャレの論文ブーツ1号2号」のコーナーから、
ダジャレ係長43歳・石黒謙吾がを30年かかって構築した奥義を披露いたします。
ここでは「11のダジャレの奥義」について、大筋に触れていますが、
本書には、もっとディープな話が満載です。よかったら、どうぞご覧ください。
1 ダジャレは「見立て」による知的作業
「あることばを意識して、ほかの似たことばと結びつける」これはことばの「見立て」に
他なりません。昔から絵画など芸術の分野で取り入れられてきた、知的な遊びの一種「見立て」。
お寺の庭の砂を川に見たてて、といったふうにも取り入れられています。
2 ダジャレの形成によるパターン分類
ダジャレを形成する片方のことばをA、もう一方をBとして、多くのパターンに分類していきます。
読みに関わるところでいうと、「ボク土左衛門」ならAとBの母音が同じかかなり近いもの、
「機関車トーマス・マン」ならAの後半とBの前半が同じでつないだものといった感じです。
3 B面という考え方とは?
「松たけ子」というダジャレなら、「松茸」と「松たけ子」の2つのことばの相似点をもとに構築されています。
よって、ダジャレには必ず2通りの状況が考えられるというわけです。どちらにおいても、
ダジャレを使用することは可能ですが、よりウケやすい状況をA面、そうでない状況をB面としました。
4 逆算の論理=遠回りして攻める
自然にダジャレを産み出すためには、常に逆算して考えるクセをつけ、なるべく遠くにあるものを
ひっぱってきて結びつける意識を持ちたいものです。「風が吹けば桶屋が儲かる」ぐらい遠回りしましょう。
近場を狙っていると、誰でも思いつく作品しか生み出せませんから。
5 話の流れを作る三段論法的発想
ダジャレを思いついた時、自然にそこにいきつく話題の流れを、自らハンドリングする必要があります。
話の「流れ」、場の空気やその後に続く会話を読みつつ、「タイミング」を見計らって、ダジャレを披露。
もちろん、「後処理(フォロー)」も万全に。ダジャレは前後を含めた総合芸術なのです。
6 適性はカッコ悪くなれるかどうか
向き不向きという観点から、ダジャレと人の関係を見てみましょう。
どんな人がダジャレ向きだと思いますか?ただひとつズバリ、「カッコ悪くなれる人」です。
ダジャレ初心者は、ウケなくとも、自分が納得できるレベルでなくとも言い続けることが大事。
7 場に応じたセルフフォロー法で
いわゆるダジャレの「後処理」。他人から何かしらのリアクションがある前に、自分で言ったダジャレに
追い討ちをかけたり、途方にくれた感じで「遠い…」、すぱっと切り替える感じで「以上!」、
照れ臭さを演出し、がんばりましたよ、というかわいさをネタに「なんちて〜」と言ってみたり……。
8 理想的リアクションが質の高い会話を
総合芸術としてのダジャレにおいては、聞いた側のリアクションもまた、
含まれる要素としてないがしろにはできません。ウィットに富んだよいリアクションは、
質の高い会話を成立させ、そこに、テニスのラリーのような心地よさが生まれます。
9 スピード+量は、質に比例する
最初はとにかく質より量。とにかくたくさん、しかも速くダジャる。
たくさん作ればいいものが出てきますし、それをストックして、またアドリブで研鑽を繰り返す。
ひとりの時も、常に頭の中でことばをつないでください。起きた瞬間から眠るまでが戦い。
10 ストックする行程の反復で公式を
ストックは、多ければいいに決まっていますが、ただ引き出しにしまうだけでダメ。
しまう時に、用法を考え、いつどうやって使うかを想定してから引き出しに入れてください。
この行程を踏まずに片づけてしまうと、いざという時に探せないのです。
11 ベタさと堅さの格差が面白さ増幅
かつてあった、二木の菓子のCM(林家こん平の目をひんむいた顔が印象的だった)と、
すばらしい芸術家がオーバーラップしている「♪二木二木二木二木ニキ・ド・サンファール!」。
「ベタベタと堅いイメージの組み合わせはウケやすい」ダジャレの例です。