『日本は、』 刊行にあたって
G・D グリーンバーグ

 この本は私の、日本語による初の著作である。米国アカデミズム界(それはとりわけ 保守的で閉鎖的なところ
なのだが)の末席にいたころに量産した論文、学術書の類ではなく、政治から経済、社会、文化、音楽、野球など、
興味ある事象に対しての私のオピニオンを歯に衣着せず書かせていただいたちょっと変わった本である。

 1929年に生まれ、米国の某大学で教授として楽しく研究活動をしていた中、今でも口外し たくない・できない
ある政治的トラブルに巻き込まれ、1978年に逃げるように来日。そして30数年間、日本のいくつかの大学で教鞭
を執ってそして引退、今や埼玉県川越市で悠々自適の日々を送る元教授の老ガイジン。私の自己紹介はそれぐらい
にしておこう。

 さて、今回思うところを日本語で自由に書かせていただいたのは、最近、日本人が自らの 叡智や尊厳をあまりに
ないがしろにしているのではと思ったからだ。そして、そうなってしまった要因のひとつに米国の影があり、さら
には、 その影が忍び寄っていることに対する日本人の認識もあまりに甘い。だとしたら米国から来た老ガイジンが
声を上げ なければならないのではないか(とこう書くと、日本で言う「右翼」の思想本に映るかも知れないが、
さにあらず。私は、タイガースではマット・マートンよりも金本知憲を好む考えを持つ)。

「原発問題はイデオロギーの問題なんかではなく、物理学、化学、数学……自然科学の問題である。
1は安全、5は危険、10は死に至る。左翼も右翼も死に至る。証明可能、万国共通、一分の主観も介在しない」

「イチローの業績は認めすぎるほど認めるが、唯一インタビュー時における日本語の使い方だけはどうにか
ならないものか。妙な翻訳調の難解な言い回し。まさか私のツイートを読んでいるのだろうか(いや冗談)」

「48人もいれば『48人の中で誰がいいか』という相対的な比較のほうに意識が行くのだが、忘れてはならないのは
『48人、全体として不要である』という選択肢があるということだ。中谷美紀や大塚寧々のような女性が48人いる
のなら別だが」

 ただ、書いていることはハードな内容だけではなく、このように政治から音楽、野球まで。原発問題から、イチロー、
AKB48まで広汎に及ぶ。しかしながら、読んでいただければ分かると思うが、単なる「雑学エッセイ」 「ちょっと
いい話」ではなく、究極的には「日本には、差別や貧困や原発や戦争を無くすことが出来る叡智がある」 ことを世に
問う、攻撃的なオピニオン集であると自負している。

 最後にひとつだけ。日本についてあまりにも広汎なテーマのオピニオンを書いているため、ガイジンではなく、
日本人のゴーストライター(それも複数)が書いたものではないかという考えを多くの人が持つようだ。残念
ながらそれは間違いだ。なぜなら、あなたも、福島原発と前田敦子(私は前田より秋元才加だが)のこと両方を
考える日があるだろう? それに日本人が書いたのであれば、こんな「米国人が書いた論文を・日本人が翻訳した
日本語の本で・米国人が学んだ日本語」ような窮屈な文体で書かないだろう?

 『日本は、』をぜひよろしくお願いしたい。
さぁ、私の『日本は、』を日本は、どう受け止めてくれるだろうか。