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2012.10.12 編集者部

Q「本の企画を通したいのですがどこに出せばいいでしょう?」A.石黒謙吾「木造建築のような人間関係を…」

以前メルマガのあいさつ文に書いた文章、>2011/9/1
いま見直す機会があって、これは我ながらいいこと書いてるなということで。
時間が経つと客観的に読める。

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 「本の企画を通したいのですがどこに出せばいいでしょう?」
 という相談をよーーーーく受けます。
 たいがいは、売りにくいけど、カルチャーとして斬新な視点だったり、意義深かったり、
 まあそんな、本人がどうしても残したいという熱意が伝わってくる企画。
 僕自身が、著書もプロデュース&編書もそういうのが多いからだ。

 そして二言目にはこんな言葉が続く。
 「こんな企画なんですけど、誰か編集者を紹介してもらえませんか」
 もちろんイメージは湧きますし、知人なら紹介もしています。
 ですが、本当は、自分で探すのがいいと思う。
 紹介する際でも必ずそれを伝えます。
 僕がもったいぶったりクローズドにしているわけじゃなく、
 そのほうが、早く刊行にこぎ着ける確率が高いからです。
 僕も18年前、書籍を作り始めたときはそうしていました。
 32歳まで雑誌編集部にいたので書籍作りは見たこともなかったし
 知り合いもひとりもいなかったからこうするしかなかったのです。
 
 書店に行って、自分が出したい企画と同じ“匂い”の本を
 出している版元を探す。
 目星をつけたらダイレクトに電話する。メールする。郵送する。
 その熱意は伝わるときは伝わるだろうし、
 伝わらなければ、また、縁のある人に巡り会わなければ
 さっさと次にいけばいいんですから。
 難しいテクニックははひとつもありません。
 ただ、たんたんと、愚直に当たるだけ。
 誰にでも、いますぐできること。
 趣味的な企画は通らないほうが普通なんだから。
 ちなみに僕のケースだと200冊近く作ってきた中で、
 軽く1000回は企画のNGもらっています。
 中学卒である安藤忠雄氏も、無名時代は次々とコンペに出し
 断られ続けてもまったくめげずにたんたんと出していたとか。

 そしてデキる編集者ほど、紹介じゃなくても気にしない。
 面白ければそれだけでいい、そうアンテナを張っているから。

 出版社の有名無名にとらわれてはいけません。
 小さいところでも、オリジナリティを重んじ、
 ビジネスとして派手さはないけど、良質な本を出し、
 堅実に経営しているところもまだまだあります。
 逆に大手だから、ニッチなネタが通らないかと言えばさにあらず。
 部署というか、担当者によっては、クリエイティビティが高く、
 会社の「売り上げのプレッシャー」とうまく折り合いをつけて
 面白い人や企画を見つけ出すことに編集者的喜びを感じる人は
 たくさんいます。

 そして、その時の企画が通らなくても、次に出せる機会を作れるわけです。
 こうやってじわじわと構築していく人間関係は木造建築のような
 しぶとさがあると思う。
 てっとり早くないほうを選ぶ。
 それが見えない大きな柱になっていくと思う。

 自分で意味を考えて行動すれば、思考が定着する。
 公式化すれば、細かい対処はせずに応用するだけでいい。
 ストレスフリーと問題解決、笑って過ごす幸せ。
 それは、ライフハック的に生きないことから始まると思う。

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