好きな企画を通すコツ? たくさん断られること
久しぶりに、プロデュース&編集系の本が、夏から秋にかけて6冊とまとまっている。
(著書系はそのあとどっと、の予定)
そんなタイミングだから、実例をもとに「企画通し」関連ネタを一席。
●『ジワジワ来る○○』片岡K(アスペクト) <7/15刊行>
●『イングリッシュ・モンスターの 新TOEICテスト最強勉強法』 <7/15刊行>
菊池健彦(アーススターエンタテインメント)
●『負け美女』 うまくいかないオンナたち <10/13 刊行>
●『豆柴センパイと捨て猫コウハイ』石黒由紀子(幻冬舎) <11/11 刊行>
●『ベルギービール大全2011』三輪一記+石黒謙吾(アスペクト) <11/15 刊行>
●『読む餃子』パラダイス山元(アスペクト) <11/15 刊行>
まずここを読むにあたり念頭に置いてほしいのは
僕が作りたいというか好きな本は、<売りにくい、通しにくい、説明しにくい>
三重苦のネタと思ってください。
売るためから逆算して企画を考えることがなく、
作りたい本が、あこれはそこそこいくかも、とか、
これかなり厳しいので通すの苦戦しそうだなあ、とか常に思ってるわけ。
付き合いはじめの編集者から「売れそうな企画あったらぜひ!」
と言われたことあったので、
「いや、オレのとこにはそんなのないっすよん」と笑って返しといたけど、
そもそもそんなネタがもしもあったとしても
上澄みだけ掬おうとするあなたのようなムシのいい人には出さないでしょう、と。
昨年夏のこのエントリーボサノバ的ザツガクの本、超特急刊行への道でも書いたんだけど、
企画出すときは、やりかたは様々。
●1社づつ出していく ●3社ぐらいづつ出す ●どばっと思いつくだけ出す
明確な基準はなく僕の肌身感覚なんだけど、
<決められる自信度><ネタのニッチさ>というこちら側の都合と、
<編集者の趣味><版元の雰囲気>という先方の都合、
あたりが大きめの判断要素かな。
そして出しては断られ出しては断られをびしびし繰り返していると
トイレには〜それは〜それは〜(中略)本の神様がおるんやでーとばかりに、
なんとか決まったりする。
本としてわかりやすいのでよく話しするのは、
87万部売れた『盲導犬クイールの一生』は、9社断られて10社目だったという話し。
作ろうと思ってから6年がかりで、それもじみーに6000部から。
オレも2ヶ月後に3000部の重版かかったとき歓喜したもんなあ。
わかんないもんです。
ではここからは実例を。
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●『ジワジワ来る○○』片岡K(アスペクト) <7/15刊行>の場合
これ、素人の画像を使うネタなので、大手版元は腰が引けるはず。
会議で上司等の<やめときますかー>の合唱になると踏んだ。
そしてサブカルチャー系ラインナップに理解あるアスペクトの
宮崎洋一さんに電話。企画書さえ作らず(笑)。
すぐ検討してくれ、奇跡の1本釣り成功。
実は、アスペクトの前に、ついでの時に電話で話した編集者いたけど、
ネタ見てからですねえ、とノリ悪かったのでそれ以降出さずでアスペクトに。
そして……発売一ヶ月で刷り部数6万3000部の奇跡。。。。
こんなことはまずありませんので参考にはならない(笑)。
●『イングリッシュ・モンスターの 新TOEICテスト最強勉強法』 <7/15> の場合
これは超珍しく、版元から頂いた話しなのでプロデュースとしては例外なので割愛。
●『負け美女』 うまくいかないオンナたち <10/13 >の場合
昨年秋にツイッターで見つけたブログが面白く即メール。
初の本だとなかなか通り悪いいことは覚悟してたけど、
当初、10社あたればなんとかなるかと思ってたらドンずばり。
11社目で企画通りました。
著者のブログは→コレ
文春、幻冬舎、小学館(2部署)、扶桑社、産経新聞出版、ポプラ社、
アスペクト、廣済堂、中経出版、創美社(再提出にはなっていた)
以上10社11人からNG。
出して○×の返事なかったのは、講談社(2部署)、ワニブックス、学研。
タイミング的に中途半端になったのがスターツ出版。
出した人合計、18人。
3つづつ出したりしたけど、一度も返事もらえずもかなりあり。
よくあるのでもはやなんとも思わない。
ネタが強いとレスあるからわかりやすい。
たまたま、マガジンハウスの以前の担当が転職してたので、
別の人を紹介してもらったらなんとうまくいき!
●『豆柴センパイと捨て猫コウハイ』石黒由紀子(幻冬舎) <11/11 >の場合
これは通せる自信はまあまああった、
なので、以前、犬ネタで、先に他で決まってしまい申し訳なさもいっぱいだった
幻冬舎・菊地さんひとりだけにピンポイントで企画だし。
犬猫ものなにかあったらくださーいと言われたし、
なにより菊地さん、とんでもなく忙しいのに
どんな弱いネタ出してもすぐに×をくれるんです。
これは誠意感じるものです。
それこそ、強いネタがあったときこそこの人に出そうと思う。
NGがまたぱしっと一言で済むので、気持ちがいい。
NGには理由いりません(笑)。次にいきたいのに読む時間もったいない。
OKも同じく理由はどうでもいいやと。
詳しいほうがいいのは、再検討の材料必要な時だけ。
気をつかってくれるのはいいように思うかもだけど、
お互い忙しいのわかってるので、本質的つきあいがいいですよね。
●『ベルギービール大全2011』三輪一記+石黒謙吾(アスペクト) <11/15 >の場合
これは、自信度は50点ぐらいだった。
改訂版という本の性質上、可能性有るところが少ないと気づいてたので、
5社ぐらいNG食ったらけっこうきついと思ってたけど、
2社に出したら、共に乗り気で、結局先にアスペクトからOKが。
もう1社は担当の人がベルギービール大好きと知っていたので出したけど、
版元的にはきつかったかも。
2本釣りで成功。
●『読む餃子』パラダイス山元(アスペクト) <11/15 刊行>の場合
10年前からやりたかった企画だったから、
これも地味な性質の本になるので、通すのは苦戦を覚悟で船出を。
結局、12社目で企画通りました。
NG出たのは、文春、幻冬舎、小学館(2部署)、扶桑社、産経新聞出版、ポプラ社
新潮文庫、創美社、平凡社、中経出版、廣済堂。
出して○×の返事なかったのは、講談社(2部署)、ワニブックス、学研。
こちらも、出した人は18人。
結局、苦戦しながらもアスペクトで決定。
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いままで18年間でぼちぼちと作ってたら、
いま全部で→170冊ほどになってるけど、
断れれた回数は、10倍として1700回だからそれより少ないけど、
1000回はいってるはず。
だから、若い同業者から
「石黒さんの作る本は楽しそうでいいですね。好きな企画を通すコツを教えてください!」
と聞かれたらぱっと、「たくさん断られることだよね」と答えている。
当たり前のことだけど、地道に積み重ねるしかないんだよなあ。