書店周りに思う。数字は虚像、顔と声は実像
2009年1月のメルマガあいさつ文から。
青臭いことだけど思うがままに。
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先週、初めて経験した、きっちりとした“書店周り”。
朝10時から夕方5時まで、13軒の書店に顔を出して
新刊をプッシュ大統領するためのあいさつを。
以前からやりたくて版元の方にちょいと話したりしてましたが
気を使っていただくのか一度も実現に至りませんでした。
そして今回、『エア新書』刊行にあたり、氣合が入っていたことと、
この中味は、書店員さんに伝われば必ずオモロさがわかってもらえるはずと、
学研の編集担当・藤林さんに話してみたら、「やろうやろう!」と盛り上がり寿。
さすが、勢いの良さ、サバサバ感、濃いエネルギーの3拍子揃った!?
元『東京ストリートニュース』編集長。
ちなみに共に永ちゃんフリークだぜOK!
営業の方は来れなかったので、47歳と50歳のオッサン2人で、
朝10時に丸の内丸善をスタートし、秋葉原2軒、神保町3軒、
池袋2軒、新宿3軒、恵比寿1軒、川崎1軒まで、
♪止らない〜ha ha~っとタオルを投げながら回りましたよ。
で、いいもんですねー。実際に売っていただく書店員さんの顔を見て話し、
しかもその場で気に入ってもらえれば、もう感激じゅわーんですよ。
見本だからまだ世に出てないので、
パンの職人さんが焼き立てのパンを店先に並べる前に店の人に出して
うめえと言われる感じ。想像だけど。
特にうれしい反応の方が3人。
まずは紀伊国屋-新宿本店2階新書担当のHさん。
手に取った瞬間に、「これ、ツボです〜〜〜!」
と言って興奮状態というなんとも著者冥利につきる反応でいたく感激しました。
続いて、ジュンク堂-池袋本店3階新書担当のKさん!
かなり突っ込んだお話もできて、さすが勉強されてるな〜と頭が下がりました。
有隣堂-秋葉原のIさん!
かなりお好きの方向のようで、その場で注文とはなんともうれしいもの。
お名前はあげきれないのですが
他の書店員のみなさまも、売り場のお忙しい業務の中
ていねいにご対応いただきまして、ありがたいな、と沁みました。
8年前の春。
初版6000部スタートで当初、そのまま終る可能性大と
秘かに自分で確信していた(笑)
『盲導犬クイールの一生』が、
書店員さんの反応から、クチコミでゆっくりゆっくり火がつき、
3年がかりで87万部という夢のような結果につながりました。
刊行からずいぶん経ってぼちぼちと売れ始めた頃、
担当の方に見せていただいた文藝春秋の社内報に載っていた、
最初に力を入れて売ってくれた書店員3人の方のコメント。
それを見て、兵庫、立川、浜松町の書店3軒に
お礼の電話をしたことがありました。
その時の、書店員さんの涙声は忘れられません。
僕も胸が詰まって話せなくなりました。
本の売り上げは数字でわかります。
重版がかかればしばらくして口座にお金が入ります。
でもこれ自体は、結局、数字という“虚像”であり、
じわっと自分自身の心に響いてくる
“実像”には感じられないのです。
(だからお金ないんだっての >要自省)
読んでくれた人から、
面と向かって面白いとかよかったとか言っていただけることほど、
本を作った喜びを感じられることはありません。
そして、いかに多くの人に支えられながら
好きな本作らせてもらっているかを噛みしめつつ
これからも、少数の人に対してでいいから
その人のツボに深く入っていけるものを残していきたいと、
年頭の書店周りが再確認させてくれました。
自分に関わる人すべてに感謝の気持ちを忘れないようにしなければ。
本を作らせていただいてありがとうございます。