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2011.4.13 編集者部

実践的な書籍企画の流れ-講座にて

4/23,5/9に、
「宣伝会議」の「編集者・ライター養成講座」で講義をやります。
本当は<分類王的・チャート発想のすべて>のような講義が
画期的な深イイ講座になると思うのですが、
この講座コースは初級向けのようで、
著者であり編集者である立場から<書籍企画の流れ>についてを
やって頂けませんか?と打診されたのでではではそれでと。

50歳になり、いままで自分のやってきたことを、
少しは人に残していかないとさすがにもったいないのでは?と考えるようになった。
そういう意味では、こういうベーシックだけど
痛い思いをしながら体験していかないとわからないことを
伝えていくのは有意義なのかも。
そして機会あれば、もっともっと、
アカデミックではなく肌身感覚の<体験的な思考法>を人に残していきたいと思う。

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講義の経験は多少だがある。
僕はほぼ、パソコンで作った画像系は使わない。
作ったほうが受講生が楽しく聴けるのはわかっているんだけど、
どうも、送り手も受け手もその<媒体>に頼ってしまうと感じるから。
なので、基本は、話とホワイトボードにざくざくメモしていく<ライブイズム>形式。
(アミューズ創設者・大里洋吉さんのモットー=ライブイズム)
そのかわり、発する単語数や、臨機応変な話の変化はかなりだ。

ネット、メール、ウィキペディア時代に育った人たちと
仕事をしていて、電話や打ち合わせで話し合ったことが、
すっかり頭に残っていない人の割合が増えているように思う。
常に、<そこにあるものをあとで見られる>という意識が働いているのではないか。
これは、憂慮すべきことだと思うのよ。
実社会ではまだまだキモとなるやりとりは口頭レベルが多いもの。
この対面のやりとりをぬるく考えていては信頼を失うことになる。

<メッセージを施してもらう>感覚を捨てよう。
<メッセージを強奪する>でなくては。

世の中で“使える人材”と認められている人はみんなこうだろう。
そしてこのポイントが、どんなジャンルの仕事でも
学生と社会人経験者のもっとも大きい差ではないかな。

なんてことを考えながら、プリント用に提出したものをそのままコピペ。
出版(と言う言葉がいつまでいまの意味で存在するかわからないけど・笑)
志望者やライター志望者の方はさっと目を通せば、少しはイメージが湧くかな。

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[プリントを最低限にするのはなぜか?]

●講座では、教材として[プリント][パワポ画面]などで、
わかりやすく説明してもらえることが多いと思う。これは「受動的」なインプット。

●しかし、ライターor編集者が現場で直面する仕事は、
向こうから懇切丁寧に材料をもらえるわけではない。
自ら 「能動的」に、仕事相手が話している事柄から情報を入れ、
整理整頓していかなければ「使えないやつ」というレッテルが貼られる。

●取材はもちろん、打ち合わせでも多くは、耳から入ることで進む。
メールやサマリーなど「読めるもの」があって当たり前と思うと、
耳で聴いたことを漏らしやすくなる。
これは、いろいろな人を見て体験的に感じることです。

●以上の理由から、より実践的な講座を目指すため、
講座内容のプリントは最低限とします。
ただし、講義の現場では、
臨機応変にホワイトボードに走り書きのメモをしていきますので、
目と耳でライブの中で集中し、たくさん吸収して頂ければ。

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[講座を効率的に受けて頂くための簡単なお願い]

●著者&編集者、両方の立場から、実際に手がけた書籍170冊ほどを例にあげて、
かなり具体的に話していきます。そのため、どんなジャンルの本を作ってきたか、
おおよそ把握していれば、話がすっと入っていくと思います。
以下の、作った書籍全ラインアップを前もって見ておいて頂ければ。

165冊すべての紹介コメント
すべてが一覧で並んだページはこちら

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[書籍作りー企画から刊行以降までの流れ]

★実際は、ありとあらゆるパターンがあり、
 フォーマット化できるものではないので、一元論では語れない。
 これはあくまでごく代表的な例。
★<ライター、著者の場合>、<編集者、プロデューサーの場合>と便宜上分けましたが、
 この形態自体も千差万別で入り交じっていることもあり。
★2つの立場は、同じ本作りの目的に向かっていながらも、視線そのものは、
 1と他と正反対で、真逆の仕事と言っていい。
★その違いを意識すれば、仕事の実際が見えてくる。

<ライター、著者の場合>・・・・・・・・・

【初動】
■企画を思いつく。
 書きたいテーマがある。
 これを書きませんかと依頼がある。

【地固め】
■進行、ギャランティ等、予算すりあわせ
■編集者(プロデューサーの時も)と打ち合わせ
■下準備(予備取材、資料調べ)
■着想、構成考える
■スケジュールやりくり

【本編】
■取材、調査→アポ取り
■取材
 インタビュー
 資料調べ
■執筆

【詰め】
■ディレクション受け
■直し執筆(2稿、3稿〜)
■脱稿

【検証】
■著者校正(初校、再校、三校〜)
 取材相手チェックの直し調整
 編集者の直し指示調整
 校閲の指摘調整
■事実関係確認等
■校了チェック

【後始末】
■関係者献本リスト出し
■パブ献本リスト出し
■請求書提出
■著者本買い取り
■お礼状、お礼メール、電話

【加速】
■パブリシティ活動
■続編プッシュ

<編集者、プロデューサーの場合>・・・・・・・・・

【初動】
■企画を思いつく。
 誰かに書かせたいテーマがある。
 いいネタを見つける
 書かせたい(広めたい)著者を見つける

【地固め】
■著者サイドにアポ取り(複数の場合も)
■著者サイドと進行、ギャランティ等、予算すりあわせ
■企画書作り
■社内の説得、根回し等(上司、営業部など)
■社内の企画会議を通す(2〜3段階とか)

【定着】
■スタッフィング(デザイナー、イラストレーター、カメラマン等)
■スタッフにアポ取り、進行、ギャランティ等、予算すりあわせ
■印刷費含めた総予算組み立て
■発売日から逆算したスケジューリング立て
■著者サイドと内容打ち合わせ
■構成考える

【本編】
■著者サイドにつつき、原稿の取り立て
■デザイナーなどスタッフのスケジュール管理
■印刷所と調整
■タイトル考え、調整(著者サイド、上司、営業)
■帯のコピー考え、調整(著者サイド、上司、営業)
■生原稿へディレクション
■デザインフォーマット、カバーデザイン等を
 各方面と調整(著者サイド、上司、営業)
■直し原稿チェック(2稿、3稿〜)
■パブリシティの仕込み
■著者サイドが脱稿

【詰め】
■校正(初校、再校、三校〜)
 取材相手チェックの直し調整
 著者校正の直しを調整
 校閲の指摘、著者と調整
■事実関係確認等フォロー
■デザイナーにデザインチェック回す
■タイトル、カバー、内容など社内のチェック受け
■校了

【後始末】
■関係者献本
■パブ献本
■請求書もらう
■お礼状、お礼メール、電話

【加速】
■パブリシティプッシュ攻勢
 イベント、サイン会、トークショー、番組、取材受け記事
■続編を社内に通す

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