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2011.4.8 編集者部

ツイッターで原稿を取り立てる実験企画本『難しい。』

『難しい。』
こんなタイトルの本を、プロデュース・編集しようと思います。
著者はナガオカケンメイ。
ここまでならなんてことない話だけど
この先は、おそらくまだ誰もやったことがないんじゃないかという
出版界的にも事件的な試み。それは、
<ツイッターだけで原稿を取り立てる>。

彼の本は、ここ15年で10冊と←ほどよいペースで作ってきた。
しかし、最近の3冊『ナガオカケンメイの考え』『〜のやりかた』『〜とニッポン』
はすべて、自身のブログ「ナガオカ日記」で
長年にわたり書き溜まった日記を、再構成してまとめたもの。
つまり書き下ろし的な本はずっと出ていない。
これより前から何度も企画し、本人と話して乗り気になるものの、
なにしろ、Dの都道府県展開だ、60VISIONだ、NIPPONVISIONだ、
その他もろもろデザイン周り案件で、原稿を書く精神的な余裕がないわけだ。
それはそうだと思う。
出版が本業の僕ですら、プロデュース・構成・編集の仕事が多いと
自分の著書を書く余裕がなくなるのだから、
推し進めたいデザイン活動で頭がいっぱいで、
本もやりたいとは思いながらそこまで頭と心のキャパが空かないわけですね。

そこでこちらも当然、対策は考える。
「しゃべってくれれば、アンカー立ててまとめるからやろうよ!」
実は、2年ほど前に、このプランで1冊進み始めた企画があり、
版元への段取りもフィックスし、スタッフも予算もスケジュールもきっちり組みあげた。
インタビューは4時間を4回ぐらいで設定。
メインの聞き手は僕で、まとめるのはライターさん。

ところが、さあ1回目のインタビューという段になって
「石黒さん、やっぱり、自分で書かない本はどうかと思うんですよ…」
というストレートな思いが飛んできて、ナシにしました。
普通は、話すだけで本になるならと考えるところですが
彼はどうしても自分の考えは自分で文章にしないと釈然としないのです。
わかってはいたんだけど、この時点でこう思うってのは
相当こだわりあるんだなとすんなりあきらめ、
ナガちゃんについては、もう<語り下ろし>は考えないことにしました。

彼は昔から、<企画に合わせて考えるor書く>タイプの著者ではなく、
<作り出すor書くものを引き出してまとめる>タイプの著者でした。
『ふたりの絵本 結婚。』
という、僕が大好きな、ナガオカの感動系絵本があります。
これなどは、もともとはプライベートの贈り物だった。
出した後に、同じようなのできないかな?とさらっと投げかけたけど
「作ろうと思って作れるもんじゃないですからねえ」
と言われたけどそりゃそうだ。
「『盲導犬クイールの一生』の第二弾をお願いしますよ!」
と、ある版元の売り上げ命の脳天気な人に言われたことがあるけど
犬もユーザーも亡くなってるっての(笑)。
それと同じような話なわけですね。

そんなナガオカケンメイなので、
いまは<これやらない?これやらない?>と本作りを煽ったりはまったくしない。
僕の方も、著書がたまっているので強引に動かす時間的余裕がない。
しかし、冒頭の企画は<よしやろう!>と強く思い立った。
なぜならこのテーマは、ナガオカの現在のフィールドである
デザイン周りの枠を超え、万人が興味あり問いかけることのできる話だから。

きっかけは2ヶ月ほど前。
ここ7〜8年、春夏秋冬のペースで続けている
ナガオカケンメイとの差し飲みというか差しホルモン焼きの場にて。
事務所近くの「ホルモン ゆうじ」で
公私硬軟取り混ぜ、とことん腹を割って(ホルモンだけに)
3時間ぐらい話し込む楽しい時間。
ここで、ふと彼から出た言葉。
「最近、難しい、ってことについてよく考えるんですよ。
難しいって、なんなんでしょうね?」
これが僕のツボに入った。
もはや哲学の世界。その迷宮のような深遠なテーマを、
ナガオカ的リアル視点から、扉をひとつひとつ開けて見ていったら、
誰しも腑に落ちる(ホルモンだけに)のでないか?と考えた。
詳しく書くとキリがないけど、「難しい」を巡る彼の考えは
とても興味深いものでした。

とここまできて、しかし困ったのはこちら。
なにしろ、まとまった文章を書く暇も精神的余裕もないのはわかっている。
しかし、短いスパンで追い込んで追い込んで少しずつ
取り立てるならできるかもしれない!
(編集者は本当に取り立てと言います。著者には伝わらないように。。。)
サラ金の取り立て電話のように、メールでつつくわけだ。
そしてこうやって追い込まれることを、
ナガオカはいやがらない、というか「いいですよ!そうしてください!」
と楽しそうで、ちょっとした変態だ。

とここまで読むとこれでうまく行くと思うだろうけど人間のサボり心は手強い。
メールで追い込む程度ではナガオカの現状で原稿を取れるわけがない、
とホルモンを噛みしめながら考えてていて、いいことを思いついた。
<衆人環視の中で取り立てる>のだ。
つまり、ツイッターのリプライでつつく。
そしてブログにあげていってもらう。
これなら、いつ逃げていつちゃんと書いたか丸わかり。
逃げっぱなしではかっこ悪いという気持ちにもなり
しっかりやるのではないか。
この実験的な試みの提案に対してナガオカも乗ってきた。
「うわー、面白いじゃないですか!」
完全な変態である。

その場でざっとこう具体的な計画を提案した。

●ナガオカケンメイの「難しい。」という専用ブログを作る。
 >ナガちゃんとこのスタッフにお願い
●ここに自分であげていくスタイルをとる。
●やりとりは、ツイッターのリプライかRT限定。
●1冊で200Pなら、4P平均で1編として、50編必要。
●週1回更新を最低線として、50週でOK。つまり1年が最長の締め切り。
●書けない週があったら前週か翌週に2つで追いつくように。
●もちろん、1年を待たずして終わるのは大歓迎。
●ツイッターのDM、通常のメール、電話などでやりとりは禁じ手。
●内容に関して、大きな話のため会って打ち合わせはありだけど、
 やっても2回ぐらいか。

こんな感じだ。
実はそれ以来この話を、スポニチしていた…いや、サンスポしていた…いや、
放置していたのだが、来週ふたりでトークショーをやる ←にあたり、
<えいやっ!ここで宣言しとけ>と勢いで書いた。
この実験企画本『難しい。』の話もしようと思っている。
興味ある方はぜひ。

さあ、版元も決まっていないこの企画が
無事、来春にも出せるかどうか。
大丈夫。
行動のナガオカケンメイはやりとげるに決まっている!
と、インテリヤクザさながらの取り立てが ↑ すでに始まったのであーる。

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