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2010.7.16 編集者部

著書を書く時はこうしています

今、8/26発売の本の原稿を書いています。
『キャンバスに蘇るシベリアの命』絵=勇崎作衛、構成=石黒謙吾
(創美社/発行、集英社/発売)
この本の内容についてはまたブログであらためるとして
今日は、どれぐらいの時間をかけてるかについてを。

あくまで僕の場合ですが、
原稿そのものを書いている日数は、結論だけ先に言うと、
ほとんどの著書で平均10日間、長くても2週間ほどです。
書籍のページにして1日10ページは進みます。
それならがんがん著書出せるじゃんかとお思いでしょうが
そんなオイシイ話はありません。
これはあくまで「他に何もしなくていい日」である場合に限って、なのです。
小説家などでは、比較的、執筆に集中できることが多いのではないかと思いますが、
僕の場合は、編集者もやってるため、あとは一応(!)会社にしているため、
雑案件、雑連絡がぼんぼん入ってくる。
連載記事などもある時はそこそこある。
するとなかなかそのことだけに集中して書ける状況が訪れないのですよ。

進行中のプロデュースしている本の著者や版元やデザイナーとの連絡、調整、打合せ、
原稿やデザインの取り立て、
ゲラなどのチェック、事務手続など、細々細々不思議と湧き出てくるものです。
取材の申し込みなんてもの舞い込んできます。
僕程度への取材だとそれもたいがい「あのー……。あまり時間がなくて急なのですが……」
なのでアポ入ったらすぐに笑って聞くようにしてます。
「オッケーですよ。で、時間、ないんでしょ?」
「あ、はい……」
そのほうが相手もラクでしょうから。
あとは、単発モノの記事、イベント出演などの依頼、
出版パーティや飲みのお誘い等々。
どれもこれもありがたいと感謝すべきことですから、基本はお請けする。
すると、「人と会わず、マストな急ぎ作業もなくどかんとスケジュールが空く日」
がほとんどできないわけです。

なので、著書を書くためには、まず、数ヶ月計画で、
やることを減らしていきます。
そして、よし! 「この2週間は予定を入れない!」と設定。
それでもやはり、どうしてもそこで、という取材請けなど入りますから
そんなときは、朝10時〜11時、か、夜の9時〜10時
などにしていただき、そこに順次予定を詰めこんでいって、
そこを「捨て日」にします。ちなみに、明日、土曜日がその日です。
キャンディーズ解散宣言記念日で、夕方から日比谷野音にいくため(笑)。
打合せも明日に入れました。野田さん、ありがとうございます。
こうして極力まとまった時間を作ります。

整いましたらばその間で終らせますが、僕の場合は本文を書き始める前に、
タイトル、帯、章見出し、本文と別扱いのページなどを
デザイナーがかかわる部分をきれいに片づけ、
あとは<オレだけの問題>として、憂いをなくすというか追い込んで、
背水のジントニックにしてスタートです。

そして、書き始める前にまず、この日にこれだけやって何日かかるかの表を作成。
これに基づき進め、遅れたら翌日早く事務所に来て追いかけます。
僕の場合は、12時間以上やってもぼーっとして意味なくなるので
10時〜10時が基本です。
このうち、昼飯、朝晩の諸連絡雑用で2時間は書けない時間です。
よって、書くのは10時間MAX。

ジャンルによるのですが、エンジンさえかかれば
1時間に1Pは計算できます。
四六判などノーマルな判型と内容の原稿なら、
1Pは多くて40字×20行の800字とかですね。

『盲導犬クイールの一生』は、この本を作ろうと思ってから刊行までに
6年かかりましたが、最後に原稿書いたのは、7日ほどでした。
写真と文章がだいたい半分なので、80ページ程度の原稿です。
といっても、関係者に許諾を得て、根回しし、企画書作り、
版元に通して、断られ、また通して、取材し、写真選び、ラフ切って、
とここまでが5年と11ヶ月半かかったわけですので、
本自体が10日でできるわけではないので誤解なきよう。

『ダジャレ ヌーヴォー』は、ダジャレの用例文1000個を書きましたが
1コ、5分の計算で10日で書いた時は
(そうしないと刊行日に間にあわなかった)
すごい達成感があり、
10日間で書き終って家に帰ってメシ食い始めたら、
カミサンの前で自然に涙がぼろぼろ出ました。
あんなのは初めてでしたが、あの集中力は自分でも人生最高だったと思います。

『エア新書』は、100人分の、タイトル、サブタイトル、帯コピー、
見出し5本と言う濃い内容でしたが、本文は5日で書きました。
30分1人分、1日10時間で20人でばっちりと。
『ぞりん』『すべらない偉人伝』『パピーウォーカー』などなど
本文がごりっとある著書はほとんどこんな進め方をしています。
ちなみに、ゆっくり書いても僕の場合は、クオリティはさほど変わりません。
最大限いいレベルがしれてますから(笑)。
ぼちぼち書きためた、という話を聞くと、逆にすごいなと思います。
僕は性格的にできないんですね、たぶん。

さて、昨日後半から本格的に本文に入ったシベリア抑留本で
12日に立てた予定は以下の感じ。

<シベリア 進行予定>
             2010/7/12
////////////////////////

12日(月) 終日OK   下準備
13日(火) 朝〜18時  まえがき あとがき まとめ文 
14日(水) 13時〜夜  2見開き
15日(木) 終日OK   5見開き
16日(金) 終日OK   5見開き
17日(土) 他の用事日  ×
18日(日) 終日OK   5見開き
19日(月) 朝〜19時  3見開き
20日(火) 朝〜18時  2見開き
21日(水) 終日OK   5見開き
22日(木) 終日OK   5見開き
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
23日(金) 終日OK   <予備日>

本文以外の部分はすべてデザイナーの川名さんに回っています。
表紙や帯などは最初に書いたのでおとといすでに印刷所に入りました。

さすがに、順序がめちゃくちゃ逆になった本ですが(笑)
87枚の絵に付けるコピー、ビジュアル中心ページ、
自分の前書き、勇崎さん分のあとがき、プロフィール、クレジット、奥付、
すべて終って憂いなしなし。
しかし、すでに他案件に時間を相当取られ(笑)オシオシ!!
『Number』ゲラチェック、「本座」サイト記事チェックと次回ラフ、
『文藝春秋』の取材受け(今後の政局について…なわけなく、毎度のキャンディーズ笑)
8/9売『このツイートは覚えておかなくちゃ。』(嶋浩一郎・講談社)の入稿
日本ビアジャーナリスト会議の懇親飲み、
など実は今週来週こまごま案件ありますが、重いものはかわせるので
でも来週じゅうには絶対に終らせますよ。

シベリア抑留者の勇崎さんは、現在87歳。
僕が初めてお会いした4年前には脳梗塞で倒れたあとですでに病床で
話ができない状態でした。
なので、勇崎さんが書かれた文章やメモ、資料などをもとに
僕がゴースト的に、成り代わって書いています。

昨日からハチマキし始めたらエンジンかかってきました
ハチマキすると[ククる]神が降りる的なことを<ブログ伊勢ー白山道>で読みましたが、
凍土に眠る人が降りてきた感じ。

4年前から企画して、しかもこんな少部数の地味な本の原稿に
時間かけていてるとめげそうになることもあるけど、
僕の死後でも、誰かがきっとこの記録を見て、
惨劇の中で生死の境目を彷徨した人が何を思っていたかを
知ってもらえると信じて自分に喝を入れています。

この原稿を書いていると、生きているだけでなんとありがたいことかと、
ふつふつと万物に感謝の念が湧いてくる。
これを読んでいただいている方にも感謝です。
ありがとうございます。

さて書こう。

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